試作品の感想だけでは、次に直す場所は決まりません。AIインタビューでは、タスク、行動、発話、改修判断を同じ記録で扱います。
先に「好きか」ではなく、達成したい行動を決める
利用者の目的を決めます。「請求書を確認する」のように、誘導しないタスクを置きます[1]。
AIには中立に聞き返させ、原因を先回りさせません。
タスク文には、画面内の用語や正しい操作を入れません。「左のメニューから設定を開いてください」では、ナビゲーションが見つかるかを試せなくなります。「来月の請求額を確認したいとき、どこから始めますか」のように、利用場面とゴールだけを渡します。参加者が途中で「何をすればよいですか」と尋ねた場合も、正解を教えた回数を行動ログへ残します。支援後に完了したことと、自力で完了したことを同じ成功として数えないためです。
一つのセッションに、目的の異なるタスクを詰め込みすぎないことも重要です。初回登録、検索、支払いのように必要な前提が異なる操作は、途中の失敗が後続タスクへ影響します。調べたい論点ごとに開始画面を固定し、同じ版・同じタスクで比較できる条件を先に決めます。AIの追問は自由にしても、比較の軸まで変えない設計にします。
証拠を四つの欄に分ける
評価ログは、AI要約だけを残さず、四つを分けます。
- 提示条件:試作品の版、端末、タスク文。
- 行動:到達・中断・戻るなどの事実。
- 発話:理解・期待・迷いの原文。
- 解釈と処置:仮説、改修案、再確認条件。
画面記録は、操作と発話を照合する材料です[2]。範囲・保存先・利用目的を同意時に明示し、必要なければ匿名化した試作品を使います。
たとえば「見つけにくい」という発話があっても、画面記録では検索を試していたのか、メニューを往復していたのか、表示内容を読んで止まったのかを確認します。画面で起きた事実と、本人がそう解釈した理由は、どちらか一方だけでは改修に不足します。逆に、発話が少なくても迷いなく別経路で完了した参加者は、現在の導線の代替行動を示す材料になります。
この四欄は、AIの自動要約を否定するためのものではありません。要約には「どのタスクの、どの時点の、どの発話に基づくか」を戻せる参照を付けます。調査者は、解釈欄を確定事実ではなく仮説として扱い、修正後に再テストする対象を選びます。
AIの要約を改修指示として確定しない
AIは論点を速く集められますが、「利用者は設定画面を嫌った」を改修指示にしてはいけません。元記録へ戻り、停止、別経路での完了、説明不足と操作不能を分けます。
Listen Labs掲載のカリフォルニア芸術大学事例は、Figma試作品の操作記録、追問、動画、文字起こしを組み合わせています[3]。AIは研究者や設計判断を置き換えません。
改修候補を選ぶときは、要望の多さではなく、タスクの目的への影響を見ます。ある参加者が「色を変えてほしい」と言っても、実際には次の操作を示す文言を理解できなかったのかもしれません。見た目の好み、理解の誤り、操作不能、対象外の要望を分けると、デザイナーや開発者が修正可能な問いになります。重要な不一致は、別の参加者にも同じタスクを試してもらい、再現する障壁かを確かめます。
アクセシビリティは別の評価軸を置く
操作が完了した人だけを見て「使いやすい」と結論づけると、支援技術や端末による障壁を見落とします。W3Cは、障害のある利用者を継続的に含め、少数の評価を一般化しないよう勧めています[4]。利用者評価はWCAG適合の証明にもなりません。
支援技術を使う参加者がいる場合、タスクを短くすることだけで負担を解決したと判断しません。使用している支援技術、端末設定、参加者が普段使う操作方法を、本人の同意の範囲で記録します。そこで見つかった障壁は通常のUI改善と分けて、技術基準・専門家確認へ渡します。AIによる会話の速さを理由に、観察やアクセシビリティ検証を省略しないことが必要です。
1回の調査を次の改修へ渡す
終了時には、版、タスク、結果を一枚にまとめ、改修候補に画面時刻・発話・再テストを付けます。
改修後は、同じ参加者から感想を取り直すだけでなく、同じタスクを別の参加者がどう達成するかも見ます。前回の調査で見つけた障壁が消えたのか、別の場所へ移っただけなのか、変更が関係ない人の操作を悪化させていないかを分けるためです。AIインタビューはこの反復の記録と追問を速くできますが、設計上の意思決定を自動化する道具ではありません。
既存の回答形式の選び方、パイロット調査、A/Bテスト後のAIインタビューも参照してください。
CoeSignal(株式会社TechWorkerが提供するAIインタビュープラットフォーム)では、調査設計と実査を相談できます。
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適用限界
AIインタビューと画面記録は、少数の障壁を市場全体の割合や売上影響へ変換するものではありません。高リスク領域では、実利用環境、専門家レビュー、基準適合の確認を別に行います。
一次情報と確認範囲
確認日:2026年9月17日。製品仕様・制度は更新されるため、導入時はリンク先の最新版を再確認してください。海外の制度・職業規範は日本へ直接適用せず、相違点と限界を本文に明記しています。
